動画撮影・編集:水谷明希 |
豪:面白かったですよ。なんかちょっと香港映画的なノリもあって。編集のテンポがいいから面白いんですね。今までの日本映画とは違いますよね、ものすごく底抜けに明るくて。 佐藤:すごいグルーブ感ですよね。 豪:“映画とアニメの中間”みたいな感覚がありますよね。敵キャラのファッションもものすごいから、現実感があのファッションで成立するのかな、大丈夫かな? と心配したんですけど、でも始まるとすぐ納得できちゃう。ああ、この映画の現実では、ゴールド・クローのあの格好でもオーケーなんだ、とわかってしまうんですね。
豪:そんなことないですよ。アニメ的な画面作りが功を奏しているな、と思いましたし、飛び跳ねようが何しようが、普通じゃできない姿勢がうまくいってて、迫力がありましたね。『マトリックス』なんかも、写真を使った新しい見せ方をしていますから、これから先、ああいう演出が増えてくるんじゃないかな、と思いましたね。 佐藤:走り方とかも、アニメ観て「ぽく」してみたんです。私、普通に走るんだとへたで内股になっちゃうんですけど、マンガぽいというか、手を体の横に付けて。歩き方とか立ち方とかも。ポーズも、ピシッときめるところとか、マンガぽかったですね。 豪:佐藤さんのハニー、ホントにマンガのキャラに見えましたね。誉め言葉になるかわかんないけど(笑)。マンガって、マンガという媒体自体が動かないし、リアルじゃないじゃないですか。だから、リアルなものに近づけようようという努力って必要なんですよね。逆に、マンガを原作にした映画っていうのは、やっている人はリアルな人間ですから、逆にマンガに近づけようとする。立っている基盤は違うんですけど、逆にお互いに歩み寄ろうとしている感じで、面白いなと思いますね。 ちょうど佐藤さんは、マンガと現実世界の橋渡しをしてくれていると思いますね。そういう資質の役者さんて、そうそういるわけじゃないですから、貴重な存在だと思いますね。 佐藤:青児くんもなっちゃんも、すごく細いから、なんかマンガっぽいんですよ。でもあたしはポチャッとしているから……。でも、逆にその“ポチャッと感”が「ああ、ハニーだ」と思ってもらえるかな(笑)。ハニーって、安心するカンジなんですよ。 |
佐藤:嬉しいです! 庵野さんて、3年前くらいから『キューティーハニー』を撮るって、言ってらしたそうじゃないですか。脚本も何回か書かれたらしくて、第1稿・第2稿の頃だと、まだ私オーディションも受けてなかったんですよ。でもその時から、台本はそんなに変わってないらしいんです。だから「あ、私本当にキャラクターに似てたんだ」と少し思いました。 オーディションの時、「あ、ハニーですね、それなら私」って言い切っちゃって。私、ときどき“ぶる”んですよ。「大丈夫です!」って。本当はすごい緊張して、汗かいてたんですけど。 佐藤:全然違いますよね。最初に台本(ホン)を読ませていただいて、それからアニメのビデオを観たら、アニメでは、すごく大人っぽく喋るんですね。なので、最初は映画もそういうカンジかな? と思ってたんですけど、監督から、「少女っぽく」とか「まだお父さんとお母さんに甘えたいというか、子どもみたいなところもある」と言われて「なるほど」と。 たまたま、撮影中に『魔女の宅急便』を観たんですよ。そうしたら「あ、これだな」って、勝手に思ったんです。 豪:『魔女の宅急便』? 佐藤:そうなんです。『魔女の宅急便』のキキって、子どもで制約が多くて、ハニーと違ってずっと黒の服しか着られない、でもそれでいて自分の使命を果たさなきゃならない。だから、子どもが観ても「あ、この気持ちわかる」って思ってもらえるんだなと。私のハニーも同じように、喋り方とかもアニメとは変えて、やさしい感じでやりました。 豪:映画のハニーは、人生経験が1年しかないっていう設定ですから、OLやってても少女の部分を残しているんですね。だから「魔女宅」で行けたのはいいかな、と思いますね。純真無垢というか、愛情に飢えている赤ん坊みたいな部分がすごく出ていて。それでいて、ある時はスーパーヒロインという、落差が大きくて面白かったですね。 やはり変身モノというのは、普段と変身後の落差が大きいほど、変身したという実感が出ますから、そういう意味ではいい狙いだったと思いますね。マンガとかアニメとかでは、そのへんはすっ飛ばしても大丈夫なんですけど、生身の人間が演じる場合は、その変化をどのくらい出せるかが勝負になるから、庵野さんの作戦は正しかったんじゃないかと思いますね。 でも、やさしい喋り方なんですよ。誰かに甘えたいみたいな。中でお風呂につかるシーンがあったんですけど、あのふにゃふにゃした喋り方でしょう、しかもけっこうお風呂が熱くてのぼせちゃったもんだから、私ただでさえちゃんと喋れてないのに、余計にふにゃふにゃ口調になって(笑)。あの時は真面目にふやけましたね。「ちょっと冷ためにしてもらっていいですか」って、水、足してもらいましたもん。 豪:ネコと話しているところは、佐藤さんすごく体が柔らかくて、海老反りで足の裏で頭叩いたりしてましたよね。もうあれだけでスーパーな感じがして、「この子なら変身してもいいかな」と思いました。体、柔らかいですねえ。僕は体操部だったんですけど、体固くて。 佐藤:あれは、ハニーがいつもトレーニングをしているという設定がありまして。でも、ダンベルとかのグッズも用意はしてあったんですけど、それじゃつまんないから、ああなりました。 庵野監督の映画では、『エヴァ』(『新世紀エヴァンゲリオン』)にもあったんですけどね。今回も脚を広げたポーズで撮るシーンがいくつかあって。あれも、体が柔らかくないと、意外に出来ないんですよ〜。 |
佐藤:2003年の7月10日にクランク・インして、8月31日に終わった……と言いたいとこなんですけど、終わったのは9月1日の朝5時です。はっきり覚えてます。そのあと、アフレコとか予告編とか9月10日前後までかかって。だから、丸2ヵ月ですね。前半がロケで、先生が見にいらっしゃったのが、7月16日? 豪:そうですね。結局その時と自分が出るとこと、2回しか撮影現場に行かなかったんですけど、もっと行きたかったですね。 佐藤:実は、先生がいらした時、私、クッキーを焼いてきてたんですよ。「青汁クッキー」とか「ゴマクッキー」とか「普通の」とか、いっぱい。最初はみんな食べてくれてたんですけど、永井先生がおいしいパンを差し入れしてくださったら、パンは一気になくなったのに、私のクッキーはすごい山のように残ってて。「ううう……。もういいよお、我慢して食べなくても……」(笑)。 豪:それはすみませんでした(笑)。このホテル(注:リーガロイヤルホテル)のスイートルーム借りて、青児くんの部屋の場面を撮影してたんですよね。そこを僕が表敬訪問して。 佐藤:そういえば、これ、言っていいんですかね? 永井先生の出演された場面で、すごいアクシデントがあったじゃないですか。先生が車に乗っていると、私がミッチーさんにやられて、その車のフロントガラスに落ちるって場面なんですけど。リハーサルは吹き替えの方がやってくれて、そのあと私が本番で1回やったら、フロントガラスにパッと蜘蛛の巣状にひびが入ってしまって(笑)。 豪:吹き替えの方が何回ドシンドシンやってもなんともなかったのに、それが佐藤さんの1回で(笑)。 豪:でも、カメラマンさんはすごく喜んでましたね。「これはいいシーンが撮れた」と(笑)。でも僕自身の演技に何回もダメが出て、あの場面は何回も撮り直しして、編集してあるんです(笑)。 佐藤:私もすごい取り直しありましたよ。海ほたるのシーンで結構長回しのシーンがあったんですけど、何度もダメが出て、51回もテイクしたらしいです(笑)。あと、おにぎりを食べるシーンでも──予告編で「ん?」という一瞬の場面ですけど──テスト入れると36回食べました。それで、本当に申し訳ないんですけど、それから2ヵ月、おにぎりというかお米がダメになりました(笑)。 豪:原作でも、公園でお弁当食べてエネルギーを補充するところがあるんですけど、庵野さん、あの場面が好きだって言っていましたからね(笑)。 |
豪:そういうところで、現実離れした世界を、現実とつないでいるんだと思うんですよね。なじみやすいアイテムとして、おにぎりとかを使って。それで、戦っている世界は、本当に現実離れした世界なんだけど、おにぎりを食っているところで、見ている人は現実感を持つんじゃないですかね。 佐藤:あと、なんと言っても“勢い”ですかね(笑)。「うおー! すごいー!」っていう。皆さんが観たことがない映像がいくつか出てくるので。特に“ハニーフラッシュ”をお見逃しなく! ですけど、最初から最後まで全部面白いですよ。 佐藤:私、ちっちゃなお子さんに観てほしいんですね。ハニーって、いつも敵と戦って激しいアクションしてるのに、ふだんは普通の人より何もできなかったりするんですよ。「なんでこんなに不器用なんだろうなあ」と思いながら、おにぎり食べて頑張ってたりするんです。 私もちっちゃいころはね、「お前はバカだバカだ」って言われて育ったの。ホントになにもできなかったりして。今になって、人間やっぱりあきらめちゃいけないなと思いました。だからこの映画を通じて、「ヘンだ」とか「バカだ」とか言われている子に、夢を持たせてあげられたらなと思います。わかりますか? 「世界を変えるのはバカだよ」と思う、悪いけど。本当に思いました。ハニーはバカじゃないんですけど、そう言われてきたり、世間にそう思われていても、世界を変えることはできるとか。 「私はすごい力があるんじゃないか」って思っているちっちゃい子って、意外にすごくたくさんいると思うんですよ。そういう子に、夢を持たせてあげられたらなって。私もちっちゃいころは、「もしかしたら羽根が生えるんじゃないかな」とか思ってたし、「すごいアクションができるんじゃないかな」とも思ってたし。 豪:そうなんですか? 佐藤:私、子供の頃すごい貧血で、校長先生の話とかで一番最初に倒れちゃったりしてたんですよ。気が付いたら、木の下なんかにいて。でも、いつか先生の話とか聞かなくて済む人間になるはずとか思って、話なんか聞かないで側転やバック転でピョンピョン、聞かないで逃げちゃうとか、いつも校長先生の話を聞くたびに想像してたんです。貧血で気持ち悪くなると、そういう楽しいことを考えながら倒れていた(笑)。子どもだってストレスあるんですよ。子どもに、ストレス解消に観に来て欲しいですね。 佐藤:『パート2』の冒頭のアイディア、もうあるらしいんですよ。今回は“恋愛”が全然ないんですよ、ハニーに。監督がおっしゃっていたのでは、『パート2』では青児くんとなっちゃんが結婚して、結婚式にハニーも来て「あ〜おめでと〜」って言ってる。で、花嫁がブーケを投げて、ハニーが取ろうとした瞬間に、ゴールドクローに横取りされてしまう、というところからスタートしようと(笑)。 豪:原作でも、ハニーの「恋愛」はないですね。ファンレターから見ても、読者はそういうのをイヤがる傾向があるのかな、とも思えますしね。自分だけのハニーにしておきたいから。アニメの『F(フラッシュ)』では、最後にハニーが結婚しちゃうじゃないですか。それを観て、うちのフランス人スタッフのピエールというのが、真剣に怒ってましたから(笑)。 佐藤:『2』で恋愛があったら……恋愛はしないですね。あるとすれば、シスター・ジルの執事と仲良くなるとか。恋愛は絶対にしないですね。種を二人で植えている、とかいうのがいいですね。でも、「あ〜すてき〜」とか言う人は現れたりして? 豪:映画は生身の人間が演じるわけですから、恋人もいたほうが面白くなるんじゃないかという気もしますね。映画のハニーはファザコンみたいな感じがちょっとあったから、相手はきっとパパに似ている人なんじゃないですか? 豪:逆に、うんと弱っちい奴で、ハニーが「守ってあげなきゃ」という人でも成立するかな(笑)? そのへんも含めて、『パート2』を期待したいですね。 佐藤:そういえば先生、今年の5月にカンヌがあるじゃないですか。『キューティーハニー』、行けますかね? 豪:いける、と思うんですけどね。カンヌじゃなくてドーヴィル映画祭に、って話もあるんですよ。ミステリー中心の映画祭で、来年はアジア映画をメインに取り上げようとしているらしいんです。それに、アジアで公開されたら、間違いなく香港・台湾では当たりますね。 佐藤:誉めて! あたし「香港週間親善大使」だったんです。宣伝はまかせてください(笑)! |
おわり (c)永井豪/ダイナミックプロダクション2004 (c)Go Nagai/Dynamic Production Co., Ltd. 2004 |
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