用語解説
『ハレンチ学園』('68〜)
『週刊少年ジャンプ』(連載開始時は隔週刊、集英社)で連載がスタート。無茶苦茶な教師たちばかりの小学校「ハレンチ学園」を舞台に、主人公の山岸くん、女生徒の柳生みつ子(十兵衛)らが巻き起こす騒動を描いた。“性”をモチーフにしたスラップスティック・ギャグで、当時全国の小学生の間に「ハレンチ」(破廉恥)という言葉や「スカートめくり」を大流行させ、PTAは激怒、永井豪氏は猛攻撃を受けた。作品の最後では学園と文部省との戦争が勃発、登場人物の大部分が死んでしまうという、当時の漫画の常識を破壊しつくした快作。

『デビルマン』('72〜)
『週刊少年マガジン』(講談社)で連載開始。世界的に知られる永井豪の代表作で、悪魔と合体した少年・不動明を主人公にする異端のヒーロー物。雑誌連載とアニメ化が同時に進められたが、敵の悪魔たちと一緒にデビルマンのデッサンを見せられたアニメ会社が「主人公はいつ描くんですか?」と言った話は有名。漫画版では、明の恋人・美樹とその家族全員が悪魔狩りの犠牲となり市民に殺され、人間対悪魔の善悪の構図が完全に逆転するというショッキングな展開が読者に衝撃を与えた。その後『新デビルマン』『デビルマンレディー』『デビルマン・イン・ザ・ダーク』と作品世界は広がりを見せている。

『マジンガーZ』('72〜)
『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載開始。人間が搭乗する巨大ロボットというコンセプトを初めて確立、華麗にネーミングされた「必殺技」も斬新。これに続く石川賢との合作『ゲッターロボ』では、さらに主人公たちが乗る戦闘機械が「合体」するというアイディアを加え、以後その影響のもとにさまざまな巨大ロボット・アニメが出現することになる。『グレートマジンガー』『UFOロボグレンダイザー』『ゴッドマジンガー』『マジンサーガ』『Zマジンガー』と、今もなおメディアミックスを続けながら作品は現役。

『凄ノ王』('79〜)
『週刊少年マガジン』で連載開始。第4回講談社漫画賞受賞作品。先に発表された『手天童子』('76〜)などとともに「鬼」シリーズ長編作品の中核。恋人を陵辱された高校生・朱紗真悟が巨大な超能力に目覚めるという幕開けから、時空を超えた伝奇的世界が構築され、その後も『凄ノ王伝説』『凄ノ王伝説・火神子』『新・凄ノ王』『凄ノ王伝説・闇の魔人編』『凄ノ王伝説外伝』と描き続けられている。兄である永井泰宇(やすたか)の手による小説版『凄ノ王伝説』も。

『キューティーハニー』('73〜)
『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で連載開始。セクシーな美少女アンドロイド・如月[きさらぎ]ハニーが主人公の痛快お色気SFアクション。もちろん、アニメシリーズでも有名。「正義の美少女」「ロボットヒロイン」「変身儀式」「セクシー」というハニーが生みだしたコンセプトなしに、現在のニッポンのおたく文化隆盛はない。石川賢版『キューティーハニー』、『Cutieハニー』『キューティーハニーF(フラッシュ)』と漫画・アニメの双方で展開され、最近では『週刊漫画アクション』(双葉社)で『キューティーハニー天女伝説』として復活した。

『カエルの死』('77)
SF作家・筒井康隆氏が当時主催していたSF同人誌『ネオ・ヌル』に発表された、夢枕獏氏の作品。これは実は小説ではなくタイポグラフィック・ストーリー(印刷文字デザインによるビジュアルな表現)だった。この『カエルの死』がSF関係者に注目され、SF専門雑誌『奇想天外』に転載されたことが、夢枕氏の作家デビューのきっかけとなった。ただし、アマチュア時代には'69より同人誌『われらの小宇宙』(同人会ひゅうもあ)などでショート・ショートや詩を多数発表している。

「キマイラ・シリーズ」('82〜)
第1作である『幻獣少年キマイラ』(ソノラマ文庫、朝日ソノラマ)から約20年にわたって現在も書き続けられているシリーズ。幻獣キマイラの血を体内に持つ二人の少年が、徐々にキマイラ化していく過程で、古伝、古武道、現代科学が融合した伝奇世界が展開されていく。天野喜孝のイラストも人気の一因となっている。

「サイコダイバー・シリーズ」('83〜)
「魔獣狩りシリーズ」とも呼ばれる。人間の精神に侵入することのできる特殊能力を持った“サイコダイバー”が怪事件を追う。『魔獣狩り 淫楽編』(ノン・ノベル、祥伝社)から現在はタイトルを『新・魔獣狩り』として継続中。

「闇狩り師・シリーズ」('82〜)
『闇狩り師 ミスター仙人九十九乱蔵(1)』(トクマ・ノベルズ、徳間書店)から続く作品。妖怪に祟られやすい体質で“祟られ屋”とも呼ばれる九十九乱蔵が、自らの肉体だけを武器に妖怪たちと戦う。「キマイラ・シリーズ」との登場人物の交錯もあるので、併読がおすすめ。来留間慎一、石川賢、そして現在は木村周司と3度漫画化されている。

「陰陽師シリーズ」('88〜)
人間の世界と鬼や怨霊の世界が混沌としていた平安時代、天才陰陽師・安倍晴明が闇の世界が企てる巨大な陰謀と対決する。これを原作として2001年度「手塚治虫文化賞」を受賞した岡野玲子の漫画版の大ヒットもあり、安倍晴明ブームの火付け役となった作品。小説版は文藝春秋、漫画版は白泉社より発売。

『魔王ダンテ』('71〜)
『週刊ぼくらマガジン』(講談社、現在は休刊)で連載開始。「悪魔」をテーマとした数々の作品を生みだした記念すべき作品。悪魔とは実は地球の先住民族であるという設定で、神の陰謀により悪として歴史の闇に押し込められた悪魔一族が、魔王ダンテの復活により神の子孫である人間に戦いを挑む、という善悪の価値観を覆すテーマは、のちの『デビルマン』シリーズにも色濃く受け継がれている。ダンテという名前は、これものちに描かれる『ダンテ神曲』('94〜)の原作を著したダンテから来ていることは言わずもがな。2002年より『マガジンZ』(講談社)で復活、現在連載中。

『鬼─2889年の反乱─』('70)
『週刊少年マガジン』(講談社)に掲載された、初のシリアスなSF読み切り作品。2889年の未来、生物科学の進歩は人造人間を誕生させるが、人間と区別するため彼らに“角”が付けられるようになったことから悲劇が始まる。この後『吸血鬼狩り』『ススムちゃん大ショック』などの傑作読み切りが、次々と同誌上で発表されることになる。

『バイオレンスジャック』('73〜)
『週刊少年マガジン』(講談社)で連載開始、その後『月刊少年マガジン』や『週刊漫画ゴラク』へと発表舞台を替える。大地震によって本州から切り離され凶悪な無法地帯と化した関東地方で、バイオレンスジャックと呼ばれる謎の男、スラムキング、少年革命家などが覇権を巡って争う。他の永井豪作品のキャラクターも次々と登場、1万ページにも迫る壮大な展開を見せた一大SF叙事劇。その驚愕のラストシーンについて、いまだにファンの間で大論争が繰り広げられている。『バイオレンスジャック〜ハーレムボンバー編〜』というOVAのほか、ノベライゼーションも発売されている。

『幻獣変化』('81〜)
正確には「涅槃の王シリーズ」の冒頭部分にあたる『涅槃の王 巻の序 幻獣変化』。若き仏陀であるシッダールタが不老長寿の果実を求めて魔界に入り込み、想像を絶する異形の怪物たちと戦う。夢枕氏の最初の伝奇長編であり、永井豪氏が希望したせいか、現在も物語は継続中。

『ネオデビルマン』('99〜)
『月刊コミックガンマ』(竹書房)、『週刊モーニング新マグナム増刊』(講談社)でシリーズ掲載された、若手漫画家を中心とした『デビルマン』のリメイク連作。参加した漫画家は江川達也、岩明均、寺田克也、萩原玲二、田島昭宇、神崎将臣、安彦良和、黒田硫黄など錚々たる顔ぶれ。同時期にイラストによって構成された『デビルマン・イラストレーションズ』も発売されている。

乱蔵
「闇狩り師・シリーズ」の主人公・九十九乱蔵(つくも・らんぞう)。「キマイラ・シリーズ」に登場する九十九三蔵の実兄で、真壁雲斎の弟子という設定。猫股のシャモンを相棒に、超能力などを使うことなく都会に潜む妖怪と素手で戦う肉体派。描いてみたいキャラクターとして、漫画家に非常に人気が高い。トクマ・ノベルズ版での表紙イラストも、寺田克也が担当。

スラムキング
『バイオレンスジャック』に登城する敵役のキャラクターで、ジャックと大地震後の関東の覇権を争う。本名は銅磨高虎。由緒正しい旧家に生を受けるが、生まれつき超人的な筋力を持っていて、普通の状態では自分の体さえも潰してしまいかねないので、筋力を制御するために戦国武将の鎧を着せられ、18歳になるまで土蔵に鎖で縛り付けられて育ったという、特異な境遇の人物。確かに夢枕獏氏が好みそうなキャラクターだ。


用語解説
“鬼シリーズ”
永井豪氏最初のシリアスSF作品『鬼─2889年の反乱─』(1970年『週刊少年マガジン』掲載)や、長編『手天童子』(1976年『週刊少年マガジン』で連載開始)など、鬼を題材にしたSF作品群。アメリカのepic ILLUSTRATED誌に描き下ろされた『ONI』という短編もあり、日本では講談社で発売された『MAZINGER U.S.A. Version』(1999年)に収録されている。アニメでは『永井豪のこわいゾーン 怪鬼 』(1989年)『永井豪のこわいゾーン2 戦鬼 』(1990年)。ともにバンダイビジュアルより発売された。

『生まれたときから「妖怪」だった』
2002年に生誕80年を記念して講談社より出版された自叙伝。氏が妖怪に捧げたこれまでの生涯を振り返るとともに、その独立独歩の超然とした生き方が、ユーモラスに書かれている。
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『水木しげるオフィシャルBOX 妖怪世界遺産』
水木しげる氏の生誕80年を記念して2002年10月26日に講談社より発売される、妖怪データベースCD-ROMを中心とした3000セット限定の豪華BOX。CD-ROMには1840点のイラストが収録されるほか、貸本デビュー作『ロケットマン』復刻版、『悪魔くん』ソノシート復刻版(8cmCD版付き)、「サイン入り開運印」も同梱される。『ロケットマン』を含まない廉価版『プライベートBOX』も同時発売予定で、こちらは限定ではない。
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『ロケットマン』
1957年に水木しげる氏が発表した、記念すべきマンガ家デビュー単行本。貸本マンガ出版社である兎月書房から貸本マンガ単行本として刊行された。このときのペンネームは東真一郎で、のちに水木しげると改名。その後『怪獣ラバン』『怪奇猫娘』『地獄の水』『恐怖の遊星魔人』『妖奇伝(上下)』『墓場鬼太郎シリーズ』『河童の三平シリーズ』など多数の作品を、さまざまな貸本マンガ出版社より発表。『ロケットマン』は、2002年10月26日発売予定の『水木しげるオフィシャルBOX 妖怪世界遺産』(講談社)に復刻版が同梱される。予約限定3000部。

『ゲゲゲの鬼太郎』
貸本マンガとして発表された『墓場鬼太郎』の続編が、『週刊少年マガジン』(講談社)で『墓場の鬼太郎』(1965年〜)として連載開始されたが、のちに少年誌ということを考慮して編集部のすすめで『ゲゲゲの鬼太郎』と改題された。幼年誌に連載されたものをまとめた『最新版ゲゲゲの鬼太郎』というシリーズには、地獄童子という新キャラクターも登場する。1968年から、TVアニメ(モノクロ版)放送が始まり人気が爆発、さらに1971年からカラー版『ゲゲゲの鬼太郎』を放映。1985年には3回目の新作アニメが放映され、1996年には4回目が放映された。ちなみに1回目、2回目アニメのテーマソングを歌っているのは熊倉一雄、3回目は吉幾三、4回目は憂歌団。近々5回目のアニメ化の話もあるらしい。実写版では『月曜ドラマランド ゲゲゲの鬼太郎』(1985年)があり、それをもとに『悪魔くん』のドラマも交え『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪奇伝・魔笛エロイムエッサイム』というオリジナルアニメが発売された。なお、第1回アニメの主題歌を、デーモン小暮閣下率いるヘヴィーメタルバンド『聖飢魔II』(現在は解散)が『GG.G』という曲名でカヴァーしているが、とある水木しげる氏の出版記念パーティー開催にあたり、講談社は彼らが何物かも知らず、ホテルニューオータニでライヴをさせようと企画したことがある。誠に残念ながら実現しなかったが。

『墓場鬼太郎』
水木しげる氏の貸本マンガ時代の代表作。昭和初期の紙芝居作者・伊藤正美の紙芝居『ハカバ奇太郎』を1955年頃に水木しげる氏がリメイクし、紙芝居『墓場鬼太郎』として復活させたのが原型。その後、貸本屋向けの単行本として水木氏自身の手によりマンガ化された。さらに『週刊少年マガジン』で『墓場の鬼太郎』として連載開始、『ゲゲゲの鬼太郎』と改題されることになる。

『悪魔くん』
1964年に東考社ホームラン文庫より貸本マンガとして発表され、のちに『週刊少年マガジン』で1966年より連載、同時に同年より実写でTVドラマ化された。1万年に一人生まれるという天才少年・山田真吾、通称悪魔くんが魔法陣から悪魔メフィストを呼び出し、ともに世界の妖怪と戦い理想の王国を作ろうとする。『悪魔くん』は複数の雑誌でシリーズが発表されている。『週刊少年ジャンプ』(集英社)では『悪魔くん復活 千年王国』として連載された。『月刊少年ジャンプ』(集英社)では『新作悪魔くん 悪をほろぼせ! の巻』が発表され、この中では鬼太郎と悪魔くんが力を合わせて活躍する。『コミックBE!』(光文社)では『悪魔くん 世紀末大戦』が発表された。1989年より『コミックボンボン』(講談社)で連載された『最新版 悪魔くん』は、TVアニメ『悪魔くん』との同時進行企画。実写版TVドラマでは1985年に『月曜ドラマランド 悪魔くん』(フジテレビ系列)もあるが、これがもとになって『ゲゲゲの鬼太郎』のドラマも交えたオリジナルアニメ『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪奇伝・魔笛エロイムエッサイム』(1987年)も製作された。

『地獄』
佐藤プロより『SCIENCE FICTION 地獄 ─じごく─ 現代劇画作家全集 水木しげる集』の表題作として発表された。刊行年は1960年前後と思われる。その後複数の出版社より、貸本マンガ時代の作品集が復刻刊行され、その中にも収録されていることが多い。永井豪氏が特に絶賛する、貸本マンガ時代の傑作。

目玉おやじ
鬼太郎シリーズに登場する人気キャラクター。鬼太郎は、死んで埋葬された母親から墓場で生まれるが、そのとき鬼太郎の目玉に父親の霊が乗り移り、鬼太郎の体から独立して目玉おやじとなり、いつも陰に日向に鬼太郎にアドヴァイスを送る。別に“目玉おやじ”という名前ではないので、単に鬼太郎の父というのが正しいかもしれない。第1回アニメ版で声優・田の中勇が発する「キタロウ!」という裏声の印象が強烈で、目玉おやじはそういう声だということになってしまっている。茶碗に湯を張った茶碗風呂が大のお気に入り。

儲かりますよ
そんなことありませんです。

『大海獣』
『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズの中でも特に恐ろしく、かつ根強い人気があるエピソード。クジラの祖先を捜す調査隊に鬼太郎が同行した折、仲間の裏切りによりある血液を注射され、鬼太郎は巨大な毛の生えたクジラのような怪物“大海獣”に変身してしまう。1996年には『ゲゲゲの鬼太郎 大海獣』というタイトルでこのエピソードが劇場アニメ化された。

ファウスト博士
『悪魔くん』に登場する人物。悪魔くんこと山田真吾少年に、悪魔メフィストを魔法陣から呼び出す呪文を伝授、またソロモンの笛を悪魔くんに渡す。メフィストが言うことをきかないときにソロモンの笛を吹くと、メフィストの頭に激痛が走るので、彼は悪魔くんに服従せざるをえないのだ。ちなみに呪文は「エロイムエッサイム 我は求め訴えたり エロイムエッサイム くちはてし大気の聖霊よ 万人の父の名のもとに行う 我がもとめに答えよ エロイムエッサイム」なので、魔法陣の描き方を調べた上で試してみられたい。余談だが、初代・2代目のメフィストは、悪魔くんの人間性に感服して自らソロモンの笛を渡したという設定になっている。

魔法陣
悪魔くんがファウスト博士から教わった悪魔メフィストの召喚を行うときには、古井戸の地下にある魔法陣の中で、定められた呪文を唱えなければならない。魔法陣からはメフィストのほかにも、地獄の警察など地獄の住人が姿を見せることがある。いわば魔法陣は、地獄と人間界を繋ぐために開かれた門(ゲートウェイ)であり、その門を開ける暗証(パスワード)が呪文だと言える。

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