 |
教師やPTAといった、大人からの攻撃が激しくなるのと逆に、読者である子供の読者からのファンレターは、どんどん増える一方だった。「もっとやってください!」「大人はズルイ! がんばれ!」というものや、中には「大人は自分でエッチなことしているのを、僕らは知っているぞ!」というものもあった。この山のように来るファンレターが、僕にとって何よりの励みとなった。僕は、子供の気持ちの代弁者になるしかない、どんどんハダカを見せてやろうと思った。ストーリーにも工夫を凝らし、ハダカが出る必然性のあるストーリーを考えた。ここは突発的な事故で、とか、悪い先生がこんなことするから、とか。
そういう中で描いたのが「スカートめくり」だった。当時を知らない人のために書いておくと、当時テレビで流行っていたCMのパロディーだ。小川ローザさんというハーフのモデルさんが出演していて、風で彼女のスカートがまくれ上がって「オー! モーレツ!」と台詞が入るという、全国のお父さんが鼻の下を伸ばしていたアレだ。マンガの中では、十兵衛(柳生みつ子という女の子のあだ名)が山岸くんたちに、CMの真似をしてスカートをめくられる。これを描いたら、アッという間に日本中の学校で「スカートめくり」が大流行することになった。そして僕は、今度は「スカートめくりという、とんでもない遊びを流行らせた人物」ということになった。CMでやっていることなのに。
実は、この「スカートめくり」だけれど、僕は『ハレンチ学園』の中で1回しか描いてないのだ。なのに、その1回を描いて以後は、「スカートめくり」が『ハレンチ学園』の象徴のようになり、何かというと槍玉に挙げられた。よほどインパクトが強かったのだろう。十兵衛がパンツを穿き忘れていた、という設定にしちゃったのが原因かもしれないけれど。
当時の小中学生も、今ではいい大人になっている。出版社で年下の編集者に会うと「僕もスカートめくり、やりました!」と教えてくれたりする。中には、そのせいで先生に校庭のポールに縛り付けられた、という人もいたが、一体何人の女の子のスカートをめくったのだろう。僕自身は、残念ながら一度も「スカートめくり」をやったことがない。僕も、一度でいいからやってみたかった。僕が子供の頃に、こういうマンガが流行っていたらよかったのに。
『ハレンチ学園』は、途中で中断はあるものの、1972年の9月まで4年ちょっとの長期連載となった。連載の最後では、ストーリーが違う方向にどんどん変わっていったので、騒ぎはいつしか沈静化していったものの、われながら日本中からの攻撃に耐えて、よく頑張ったと思う。
ところで、最近になって思うのだけれど、バッシングの先頭に立っていた当時の学校の教師たちは、本当に「エッチだから、子供の教育上よろしくない」という理由で『ハレンチ学園』を攻撃したのだろうか。僕は、どうもそうではなかったような気がする。僕が考える、本当の『ハレンチ学園』バッシングの理由、それは次回書くことにしたい。
<第21回/おわり>
(c)永井豪/ダイナミックプロダクション2002-2003
(c)Go Nagai/Dynamic Production Co., Ltd. 2002-2003
|