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雑誌の企画で。あんまり見ないでね。
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このロボットのデザイン・コンセプトとして、僕は西洋の鎧を使うことにした。実は、このアイディアは、子供の頃にまでさかのぼる。僕が洋画の面白さに目覚めた小学生の頃、イギリスの獅子王リチャードを主人公にした冒険活劇映画を観た。身分を隠し、謎の騎士としてリチャード王が大暴れするのだが、甲冑を着ていて、兜の顔当てを「カチャン!」と下ろすのがカッコよかった。その映画を観たときに、「西洋の鎧って、まんまロボットだなあ」と思った記憶が、ロボットの造形を考えているときに甦ったのだ。前にも書いたが、「頭部に人間が乗り込む」という発想は、最初のSF連載作品『魔王ダンテ』と共通する。このことに気が付いたのは、かなり後のことだ。
僕は新しいロボットのスケッチを、そのときマネージャーをやってくれていた弟に見せた。弟は、マネージャーとしてすぐに「いける」と確信したようだった。「これはいいよ! ……で、どこでやろうか?」。相談の結果、マンガよりテレビアニメとして企画したほうがいいんじゃないか、ということになった。そこで、当時『デビルマン』でお世話になっていた、東映動画の有賀プロデューサーに話をしてみた。彼は1〜2枚のスケッチを見ただけで、「預からせてください!」と言って、持って帰った。「気に入ったみたいだね」と弟と話をしていると、スケッチを渡してから1週間後。有賀氏が「決まりましたので、すぐに主人公と敵のキャラクターを考えてください」と言ってきた。
僕はあわてて、キャラクター設定を考えた。鎧型ロボットの頭部に乗り込むから、主人公の名前は「兜」(甲児)にしよう。ヒロインは「弓」(さやか)と、他の登場人物も、武器から発想した。最初のスケッチでは、ロボットの背中にバイクが駆け上がるためのカタパルトが付いていた。しかし、その頃大人気だった『仮面ライダー』に似るのを避けるために、バイクから「ホバーパイルダー」という垂直昇降機に変え、カタパルトはなくなった。そしてロボットの名前は、最初は『アイアンZ』、それが途中で『エネルガーZ』と変わり、最終的に『マジンガーZ』と決定した。敵も巨大なロボットにして、「機械獣」と名付けた。
アニメが決定したので、今度はマンガの連載を決める必要があった。といっても、僕はそのときほとんどのマンガ雑誌で、もう何かしら仕事をやっていた。描けそうなのは、『ハレンチ学園』が終わったばかりの『少年ジャンプ』しかない。その頃『少年マガジン』の『デビルマン』に力を入れていたので、次の連載を待ってもらっていたのだ。『少年ジャンプ』は、新連載の企画を伝えると、最初は喜んだが、ロボットものだと聞くと、「えー、今さらロボットですかあ」と難色を示した。『ハレンチ学園』と同じお色気ギャグマンガを期待していたのだ。だけど、アニメはもう制作が始まっている。無理矢理頼み込んだか、交換条件を出したかは忘れたけれど、なんとか連載に持ち込むことができた。
『マジンガーZ』の新連載が始まった。そして、編集部の予想に反して、第1回目からものすごい大反響が返ってきた。
<第31回/おわり>
(c)永井豪/ダイナミックプロダクション2002-2003
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