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ほかにも、スポンサーの要望からキャラクターが生まれた例がある。『機動戦士ガンダム』という、ご存じの巨大ロボットアニメシリーズがある。企画段階で参加した友人のSF作家・高千穂遙に聞いたのだが、あの「モビルスーツ」は、ロバート・A・ハインラインの小説『宇宙の戦士』に出てくる、「パワードスーツ」という戦闘服が原型らしい。だから企画段階では、巨大サイズではなくて等身大のメカだった。だが、「等身大じゃオモチャが売れないから、巨大にしてほしい」というスポンサーの意向で、巨大ロボットになった。アニメファンの間では、有名な話らしい。その結果、『ガンダム』は『マジンガーZ』によく似てしまい、フォロワーと呼ばれることになったけれど、アニメとしてもオモチャとしても、大ヒットロングセラー商品になった。
例によっていつもの余談だけれど、『宇宙の戦士』は最近、『スターシップ・トゥルーパーズ』というタイトルで映画化された。が、これも「パワードスーツが出てこないじゃないか!」ということで、ハインライン・ファンの間で不評を買ったらしい。ポール・バーホーベン監督は「原作を読まなかったので」と言い訳していたが、たぶん別の理由がある。「パワードスーツ」を着るとあまりに強く、また安全すぎて、昆虫型宇宙生物との戦いがスリリングに盛り上がらないと思ったからではないだろうか?
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キャラクター造形には、立体感覚が欠かせない |
2次元のマンガのキャラクターがアニメになり、それが3次元のオモチャ、つまり“立体”になるというのは、僕にとって非常に嬉しいことだ。なぜなら、僕はもともとマンガのキャラクターを立体として考えているからだ。『マジンガーZ』の造形は、中世の鎧から発想したと書いたけれど、子供の頃には、その他にもいろんなデザインのロボットを、ノートにイタズラ描きしていた。そしてそれをもとに、粘土で立体のロボットを作って、弟と一緒に遊んでいたのだ。ジオラマみたいな舞台を作って、何体も作った粘土のロボットを、どれが一番強いかと考えて強そうな順に並べたり、突然自分が神になって壊したり。ロボットにはいろんな色の着いた粘土を使って、目は黄色いとかヘルメットは何色だとか、色の設定まで考えて作っていた。今思うと、これがキャラクターを作る勉強になった。
だから『マジンガーZ』を描いたときにも、最初から無意識に、立体としてのプロポーションを考えていたし、色にしても、体のどの部分が何色かということは、いつの間にか決まっていた。だからオモチャ会社も、『マジンガーZ』は立体にしやすかったのではないだろうか。立体といえば、『キューティーハニー』もまた、オモチャ遊びが原点になっている。今でこそ、男の子がアニメの美少女フィギュアを買ったりするけれど、僕が子供の頃は、「お人形遊び」は女の子のやることだ、という風潮だった。だから僕は、お人形遊びをやりたかったのにできなかった。そういう子供の頃のウラミを晴らすために、僕は大人になってから、着せ替え人形的に変身する『キューティーハニー』を描いたのだ。
さて、アニメ『マジンガーZ』シリーズが大ヒットすると、想像もしていなかった社会現象が巻き起こった。それもなんと、海外でだ。次回は、そのことを書こう。
<第34回/おわり>
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