永井豪天才マンガ家の作り方教えます! 永井豪、初の自伝的エッセイ 豪氏力研究所

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夢は僕だけのソフトウェア 「夢」って、一体何なのだろう。睡眠中の無意識状態に、脳がいろんなシミュレーションをやっている。それが映像として形成されたものが夢だ、というのが合理的な解釈かもしれない。でも、僕には「異世界の扉を開いちゃったのかな?」としか思えないこともあるし、「親の記憶かな、それとも前世の記憶かな?」と思うときもある。


時代劇は、あれでいいのだろうか?
 前回も書いたように、鬼とは「怨みのオーラ(角)を発した人間の姿」だと思っている。そして怨みは怨みを呼び、永遠に繰り返される。『鬼─2889年の反乱─』も、人間に残酷な目に遭わされた人造人間が、深い怨みを持ち、遠い過去へさかのぼって人間を皆殺しにすることを誓う。彼らは過去の世界で“鬼”と呼ばれることになったのだ。物語はそこで終わるが、現在も人間は生き残っている。しかし、こうやって人間の中には、鬼に対する怨みと恐怖が残ることになった、という結末にした。

 お伽噺の『桃太郎』では、今度は人間が「鬼征伐」に出かけることになる。『桃太郎』だけれど、尾崎紅葉が続編を書いているのをご存じだろうか。題名を『鬼桃太郎』(明治24年)という。お話はというと、桃太郎に分捕られた鬼の宝を、「鬼の桃太郎」が取り返しにいく、というものだ。考えてみれば、桃太郎は鬼を大勢殺した挙げ句、人間の財産を取り返しただけではなく、鬼の財宝まで取り上げて帰ってくる。これでは、鬼が怨むのも当然だ。僕も、『桃太郎』のパロディーマンガを描いている。ある日、宇宙人が地球、それも日本に襲来し、皆殺しにしてしまう。最後に生き残った日本人が、自分たちを襲う理由を尋ねる。すると、「オレたちの先祖を殺したからだ」と、頭に角の生えた宇宙人が『桃太郎』の本を差し出す、というオチ。

 殺し合いが起きると、どちらの側も相手に怨みを抱く。だから僕は昔から、マンガのヒーローでも、映画のヒーローでも、悪いヤツを斬り殺しておしまい、ではいけないような気がしていた。『手天童子』の中でも、主人公の手天童子に親を殺され、怨みを抱いて鬼になる人物(アイアンカイザー)を出した。主人公だろうと何だろうと、人を殺せば怨まれるのだ。イラク戦争だって、フセインが悪かろうと何だろうと、親兄弟を殺されたイラクの人が怨むのは、直接手を下したブッシュだろう。

 そういえば子供の頃、時代劇を見ながら、ずっと不思議に思っていたことがある。主人公の侍が、悪の親玉と決着をつけるために、その屋敷に乗り込む。すると悪の手先がわらわらと出てくる。主人公は手先をバッタバッタと斬り殺し、悪の親玉に迫る。悪の親玉は敵わないと知るや、「悪かった!」と土下座して謝る。するとどうしたことだろう。なんと主人公は、その親玉を許してやるではないか。「おいおい、一番悪い親玉を殺さなくていいのかよ!」と、僕はよく心の中でツッこんだものだ。手下はいわばサラリーマンで、上司に命令されて断れず、やむなく斬りかかったにすぎない。この場合、殺された手下の家族は、悪い上司を怨むだろうか。やっぱり、殺した主人公を怨むんじゃないだろうか。

 似たようなことを考えている人が、アメリカにもいた。映画『オースティン・パワーズ』シリーズの中に、こんな場面がある。パワーズが悪の組織に潜入し、敵と撃ち合いになる。一方で、幸せそうな母子が、自宅で仲良く団らんしているシーンが流れる。パワーズが敵の一人を撃ち殺す。すると、その幸せそうな家庭に電話がかかってくる。「今、ご主人がパワーズに殺されました」。幸せな風景は一転し、みんないっせいにわーっと泣き崩れる。それが何度も繰り返されるのだ。「悪の組織の日常を描く」というギャグなのだが、パワーズは相当怨まれていることだろう。


僕は、寝るたびに冒険をする
 ところで『手天童子』で僕は、ずっと夢からイメージを受け続けていた。というか、連載中ずっと、悪夢に追いかけ回されていた。こんな極端な例は珍しいのだけれど、僕は必ずと言っていいほど、寝ると夢を見る。しかも僕の見る夢は、常にリアルで、臨場感がすごくて、非常に具体的だ。だから夢を見ているとき、実際に体験しているとしか思えない。「なぜ、ここにいるのだろう。タイムスリップして過去(未来)に来たのかな?」とか「どこか他の宇宙に飛ばされたのかな?」と思うほどだ。まるで、寝るたびに冒険旅行に出かけているような感じだ。
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「日本漫画大会」で公演。今もあるのだろうか?

 中でも多いのが、ファンタジックな世界の夢だ。『千と千尋の神隠し』のように、龍に跨って空を飛んだり、惑星が次々とビルに衝突して行く風景を見たり。ゴジラがビルの谷間を悠然と歩いている夢を見たときは、映画どころの迫力じゃなくて、「うわあ、かっこいいなあ!」と嬉しかった。そういうリアルな夢だから、作品を描いているときに、ふと以前に見た夢の風景が甦り、ヒントになったことも多い。でもリアルなだけに、悪夢の世界に行ったときは、それはもう辛い。地獄の夢なんか、本当に怖い。『手天童子』連載のときに見た鬼の夢も、心底怖かった。

 ほかにも、特に強く印象に残っている夢がいくつかある。たとえば、美しいアンドロイドの女性に案内されて、未来の都市を歩く夢。透明な物質で出来た未来都市には、なぜか人間の姿はなかった。あるいは、巨大なトンネルの夢。壁にいくつもあるドアが、いろんな時代に繋がっているらしく、ベルサイユ調のドレスを着た女性、原始人、鎧武者など、様々な時代の人が歩いている。これらの夢は、まだ作品の中に描くチャンスがないけれど、いずれどこかで描くかもしれない。

「夢」って、一体何なのだろう。睡眠中の無意識状態に、脳がいろんなシミュレーションをやっている。それが映像として形成されたものが夢だ、というのが合理的な解釈かもしれない。でも、僕には「異世界の扉を開いちゃったのかな?」としか思えないこともあるし、「親の記憶かな、それとも前世の記憶かな?」と思うときもある。どちらでもいいと思う。とにかく僕にとって、夢は大きな楽しみだし、また作品作りにも役立っている。いわば夢は、僕だけの映像ソフトウェアというか、コンテンツというか、ライブラリーなのだ。

 もしまた、すごい鬼の夢を見たら、今度こそヒロイック・ファンタジーとしての鬼の世界を……。わー! ウソウソ。ウソだから、もう夢に出てこないで!


<第39回/おわり>

(c)永井豪/ダイナミックプロダクション2002-2003
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永井豪(ながい・ごう)
1945年9月6日、石川県輪島市に生まれる。石ノ森章太郎氏のアシスタントを経て、'67年『目明しポリ吉』でデビュー。'68年『ハレンチ学園』を連載開始、たちまち大人気を博し、以後現在に至るまで、幅広いジャンルの作品を大量に執筆し続けている。代表作は『デビルマン』『マジンガーZ』 『凄ノ王』『キューティーハニー』など多数。


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