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読者の猛反発は受けてしまったものの、『デビルマン』の中心キャラクターを使ったことで、『バイオレンスジャック』の作り方が決まってきた。今後も、自分が他のマンガで描いたキャラクター、それも主役級をどんどん投入していくことにしたのだ。もともと戦国時代を描くつもりで始めた作品だ。戦国武将クラスの、個性的で強いスター級のキャラクターをもっと出していかねばならない。しかし、そんなにたくさんスター級のキャラクターを作れるものでもない。いや逞馬竜のように、描けないことはないけれど、またもや生い立ちから丁寧に説明をしないといけない。それでは読者がまた飽きてしまうし、お話のパターンも似てきてしまう。
これらの問題を一挙に解決するのが、「過去に描いた、他のマンガの主役キャラクターを出す」という方法だった。彼らは、一度は主役を張ったくらいで、すでに強いキャラクターだ。また、どれも完成していて、今さらキャラクター作りをする必要がない。それに、僕の読者もよく知ってくれているから、いちいち説明をする必要がない。おまけに、僕自身も描いていて動かしやすい。まさにいいことずくめだった。
こうして『バイオレンスジャック』には、過去の作品で主役を務めたキャラクターたちが、どんどん登場してくることになった。『ガクエン退屈男』『凄ノ王』『アイアンマッスル』『マジンガーZ』『ハレンチ学園』『学園番外地』『あばしり一家』『キューティーハニー』『ズバ蛮』『骨法伝説 夢必殺拳』『ドロロンえん魔くん』『けっこう仮面』『オモライくん』、などなど。まさにオールスター総登場の様相を呈していった。このことは、読者によっては批判の対象になったようだ。作品ごとに、その主人公に対する思い入れを持ってくれているからだろう。しかし、僕はやめるつもりはなかった。
創作上のメリットばかりを挙げたけれど、こういうことをしでかした根底には、僕が「パロディー好き」だということが大きい。だから僕自身、「次は誰を出そうかな」と、描いていて楽しかった。『けっこう仮面』のときは、ギャグだから笑って許してもらえたわけで、『バイオレンスジャック』のリアルな設定では「ごめんなさい」では済まない。でも、自分のキャラクターなら、誰にも文句は言われない。けっこう仮面はどうしても出したくて、結局ストリッパーの役で出したし、マジンガーZは肩車の上に兜甲児が乗っかる形にして出した。さすがに3人肩車は絵にならないので、ゲッターロボは出さなかったけれど。手天童子も出したかったが、何枚か描いたところで、またビリビリと来て怖くなってやめた。
人犬騒動が過ぎて、人気もまた出てきた『バイオレンスジャック』だったが、連載から1年ほどたったところで、世の中に大変な問題が持ち上がった。そしてこのせいで、『週刊少年マガジン』での連載は、終了することになってしまうのだ。
<第41回/おわり>
(c)永井豪/ダイナミックプロダクション2002-2003
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