永井豪天才マンガ家の作り方教えます! 永井豪、初の自伝的エッセイ 豪氏力研究所

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『バイオレンスジャック』とは何か(4) 『バイオレンスジャック』を完結させて、あらためて思ったのだけれど、『デビルマン』を描き上げたあと、この作品に対する想い、特にあのエンディングに対する想いが、僕の中に残っていたようだ。『デビルマン』の中で、僕は一つの“世界”を、そこに住む人々もろとも消滅させた。このことに対する贖罪の意識がのしかかっていた。


まだ登場してない重要人物がいた
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紙を目の前に置いて、構想を練る。
 連載開始から、中断も含めて約16年。ついに『バイオレンスジャック』を完結させる時がやって来た。そのためには、主人公・バイオレンスジャックにまつわる秘密を、完全に明かして見せる必要があった。ジャックという人物は、確かにこの物語の主人公だ。だけど同時に、他の作品から持ち込んできた「主人公たち」を描くための狂言回しでもあり、彼(彼女)らの魅力を引っぱり出してきた“触媒”的存在でもあったから、ややこしい。

 ジャックの正体については、僕のいつもの悪いクセで、あまり深く考えずに進めてきたけれど、いざそれを明かすとなると、生半可な正体では、僕自身納得できない。実は途中、ジャックの正体を凄ノ王につなげようとしたことがあった。しかしうまく繋がらず、結局は敵として登場させることになってしまった。

 どうしたらいいのか、いろいろ考えているうちに、ふと気が付いた。「『デビルマン』のキャラクターは、不動明以外、全部出ているじゃないか!」。飛鳥了もいる。牧村美樹ちゃんもいる。でもなぜか、デビルマンだけは出していなかった。他の作品の、ほとんどあらゆるキャラクターは登場させたのに。ジャックを不動明、つまりデビルマンにしたらどうだろうか。巨大な人物だという設定も、説明がつく。「これだー!」と、僕は一人で興奮した。ジャック=デビルマン。このジャック=デビルマン、という結末は、読者の中には「納得できない」という人も多かったようだ。だけど僕にとっては、この結末以外にはありえなかった。

 そう決めたら、もう一人の重要人物・スラムキングの正体も見えてきた。「こいつは、飛鳥了の分身、つまりサタンじゃないだろうか?」。思い返してみれば、序盤に“人犬”として飛鳥了を登場させていたときから、もうこの結末は決まっていたのだ。何か運命的なものを感じた。あとは、一気にラストに向かって突き進めばよかった。こうして、1973年から始まった『バイオレンスジャック』の物語は、1990年3月、ついに完結した。単行本にしてマガジン連載分7巻、ゴラク連載分31巻の、全38巻。これを上回る長編は、もうかけないかもしれない。


『ジャック』は『デビルマン』の贖罪の物語
『バイオレンスジャック』を完結させて、あらためて思ったのだけれど、『デビルマン』を描き上げたあと、この作品に対する想い、特にあのエンディングに対する想いが、僕の中に残っていたようだ。『デビルマン』の中で、僕は一つの“世界”を、そこに住む人々もろとも消滅させた。このことに対する贖罪の意識がのしかかっていた。また、主要な登場人物である不動明、飛鳥了、牧村美樹ちゃんには、それぞれに非常に大きな想いをかかえさせたままで、作品を終わらせてしまった。その想いが、僕の中にもずんと重く残っていたのだ。

 特に大きかったのが、飛鳥了の想いだ。不動明は、思う存分やれることをやって死んでいったので、あまり未練は残ってないと思う。しかし了は、不動明という親友をだまして巻き込み、明の愛する人を死に追いやり、人類を滅ぼし、一つの世界を消滅させ、最後に明を自分の手で殺したのだ。この了の悲しみは、あまりにも大きかった。“人犬”を描いたときには、どちらかというと面白がって了を使った。でも、そのとき了は、贖罪の意識から、自分を最低の境遇に追い込んだんじゃないか、と思えてしようがない。

 つまり『バイオレンスジャック』という作品は、終わってみれば、『デビルマン』の贖罪の物語だったのだといえる。『デビルマン』で滅ぼされた世界が、『バイオレンスジャック』で復興するという構図なのだ。だから、この二つの作品はセットになっている。この“破壊と再生”という考えに思い至ってから、現実の歴史を俯瞰(ふかん)すると、同じようなことが繰り返されていることに気がついた。ある文明が破壊されて、その影響は全世界に及んで、その中から新たな復興が起こり、平和な時代が訪れ、それをまた壊す者が現れる──。

 他に適当な言葉がないから、宗教用語になるけれども、まさに「輪廻転生」なのだ。『バイオレンスジャック』の世界は、『デビルマン』で死んだ人たちが転生した世界なのだ。誤解を恐れずにまた宗教用語を使うと、『バイオレンスジャック』の世界は、『デビルマン』の世界から見ると“地獄”なのだ。前世でひどいことをした人間たちが、創り上げた世界なのだから。でも、その“地獄”に生まれる人たちもいて、その人たちにとっては地獄が“現世”であり、世界をよりよい方向へ建設して“天国”を目指した。実現できれば、そこに生まれた人たちにとっては、“地獄”は“天国”なのだ。現実の世界も、戦争や餓えで苦しむ人にとっては“地獄”だろうし、平和で豊かな国に住む人にとっては“天国”だろう。

 さらに、僕自身のストーリーマンガ家としてのテーマも、この「輪廻転生」なんじゃないかな、とわかった。僕は宗教家ではなく、もともとSFの人間なので、宗教でいう因果応報ではなく、「精神的な思念・イマジネーションが、物理的な世界にも影響を及ぼす」という言い方をしたい。「もう少しみんなで、自分たちの世界を良くしようよ」と考えれば、世界はそうなるに違いない。そういうメッセージも、『バイオレンスジャック』には含まれていると思う。

 宗教が“欲望”を禁じるのも、科学的に見れば道徳や倫理の問題ではなく、みんなでパイを分け合うほうがバランスが保たれて平和だし、独占する者が現れると、それを狙う者が出る、ということだ。精神的な思念が、現実の平和につながるのだ。

 ……でも、正直に言えば、ちょびっとは、他人よりいい目にあいたいよね。誰よりも頑張ってきたんだし。せめて、ゴルフにもうちょっと行けるくらいには……。


<第43回/おわり>

(c)永井豪/ダイナミックプロダクション2002-2003
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永井豪(ながい・ごう)
1945年9月6日、石川県輪島市に生まれる。石ノ森章太郎氏のアシスタントを経て、'67年『目明しポリ吉』でデビュー。'68年『ハレンチ学園』を連載開始、たちまち大人気を博し、以後現在に至るまで、幅広いジャンルの作品を大量に執筆し続けている。代表作は『デビルマン』『マジンガーZ』 『凄ノ王』『キューティーハニー』など多数。


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