永井豪天才マンガ家の作り方教えます! 永井豪、初の自伝的エッセイ 豪氏力研究所

    特報! キューティーハニーをイエローキャブ巨乳軍団がコスプレ、
宮澤正明撮影『キューティーハニーR.C.T. with MEGUMI』ついに発売!


ネットオリジナル『キューティーハニーR.C.T. with MEGUMI』“個人指名版!”
(6人のハニーとハニーフラッシュの写真集未公開カットからお好きなハニーを500円ポッキリでご指名)はこちら!


第3のデビルマン作品 見せるモノがなくなった僕はやむなく、まだアイディアにもなっていない、イタズラ描き用のスケッチブックを見せた。すると、それをパラパラ見ていたKさんが、突然「あ! これ、これだよ!」と、ある絵を指さした。それは、僕がヒマなときに、デビルマンを女の子にしたらどうなるだろう? と、2点だけ遊んで描いたものだった。


「話なんかどうでもいいんだ!」
『バイオレンスジャック』を描き上げたことで、僕の『デビルマン』に対する贖罪(しょくざい)の気持ちは、一応片が付いた。だから、もうデビルマンの世界を描くことは、しばらくないだろうと思った。『ジャック』に先立って1980年には『新デビルマン』を描いたし、『ジャック』も、単行本の新作描き下ろしや、雑誌で新作読み切りを発表したりしているが、これらはいわばサイドストーリーで、完全に新しい作品ではなかった。しかし'97年1月、三たびデビルマンを描くときがやってきた。

 その前の年、当時の『週刊モーニング』(講談社)の名物編集長・Kさんが、連載を依頼にやってきたのが始まりだ。「どういうものを描きましょう?」と聞くと、「何でも描きたいものを描け!」という返事。それで「こんなのはどうですか」と企画を出したら、「違う!」。……え? なんでもいんじゃないの? とビックリしたが、とりあえず別の企画を出すことにした。「じゃあ、こういうのは?」「ダメ!」。一体、僕の描きたいものって何だろう、と半年くらい悩むことになってしまった。

 見せるモノがなくなった僕はやむなく、まだアイディアにもなっていない、イタズラ描き用のスケッチブックを見せた。すると、それをパラパラ見ていたKさんが、突然「あ! これ、これだよ!」と、ある絵を指さした。それは、僕がヒマなときに、デビルマンを女の子にしたらどうなるだろう? と、2点だけ遊んで描いたものだった。Kさんは「この、生き生きとした線が最高だ。これを描かなきゃダメだ!」と、いたく気に入ったようだった。「じゃあ、デビルマンの女性版でいいんですね?」「そうそう!」「ストーリーは、まだ何も考えてないんですけど」「これだけキャラクターが立っていれば、話なんかどうでもいいんだ!」。というわけで、スケッチが2枚しかないのに、連載が決定してしまった。

 さあ、困った。まず、名前から困った。ストレートに“デビルレディー”というのを考えたが、デビルマンとは別のモノを想像されそうだった。造形がデビルマンの女性版だったし、もっとデビルマンのイメージを持ち込みたかった。最後に、“デビルマンレディー”というのがパッと浮かんだ。「マン」で「レディー」というのはヘンかなとも思ったけれど、デビルマンという種族のレディー、と考えてもらえればいい。これでタイトルも『デビルマンレディー』に決まった。


人間は進化すると、華奢(きゃしゃ)になる?
image
鬼怒川の「マジンガー大会」でファンの子供たちと。
 次に、『レディー』に登場する悪魔の設定で考え込んだ。『デビルマン』のムードは持ち込みたいのだけれど、同じ悪魔の流れを引っ張ってもしようがない。新しい悪魔像を作りたかった。当時ヒトゲノムの解析が話題に上り始めたころだったので、これを使うことにした。人間のDNA異常が全世界的に同時発生し、人間が次々と魔物になっていくのだ。あえて悪魔という言葉は使わず、デビルビーストという名前にした。レディーも、デビルビーストとして生まれたヒロインなのだ。

 このアイディアのヒントにさせてもらったものに、昔読んだ小松左京さんの短編小説『牙の時代』がある。川に牙の生えた魚が出現する下りから始まって、全生物が一斉に巨大化かつ凶暴化していくという、壮大なSFだ。こんなスケールの大きな話を短編で書いてしまうなんて、なんてモッタイナイ! と僕は以前から思っていた。原始人はゴリラのようにでかく、未来人は細い体で頭でっかち、というイメージがあるように、進化すると生物は華奢になっていく、という共通認識がある。『牙の時代』はこれを見事に覆し、凶暴化へ向かうという逆転の未来予測を立てたところが、ショッキングだった。

『バイオレンスジャック』は、一度滅びた『デビルマン』の世界を、サタンが復活させた世界の物語だった。しかし『デビルマンレディー』では、『デビルマン』とは全く別の作品にしたかった。不動明やハルマゲドンも、出す予定は全然なかった。レディーを不動ジュンという名前にしたのも、不動明の代わりを務めさせるためで、「明は出ませんよ」という意思表示だったのだ。だから『レディー』の中では、現実の世界と同じく『デビルマン』がマンガの本で売られていることになっている。人類全体の進化と、戦争に向かっていく世界を重ね合わせていけば、それだけで充分に面白い話になると思った。

 しかし、である。連載を重ねていくうちに、ファンや周囲の人から「いつデビルマンが出てくるんですか?」と聞かれるようになった。やはりデビルマンという名前がついていると、不動明の登場を、どうしても期待してしまうらしい。というか、出ないと納得してもらえないようなのだ。そうなると僕も、「そんなに期待されているのなら、出そうかな」とか、「出せば間違いなく人気がとれるな」とか、考えるようになっていった。

 一方でこの頃、僕自身も、作品の先行きに少し不安があった。その不安の原因は、主人公であるレディーだった。とにかく、真面目すぎるのだ。真面目だから無茶な行動はできず、事件が起こると行動が限られる。明のような、完全に強い万能のスーパーヒロインにはなれないな、どっかで倒れるかもしれないな、と感じていた。不思議な話だけれど、自分の生みだしたキャラクターでも、自由自在に動かせるヤツと、そうではなくて勝手に行動範囲を決めてしまうヤツが出てくる。不動ジュンの場合は、後者だった。暴れさせようと思って描いていても、行動にブレーキがかかってしまうのだ。

「よし、不動明を出そう!」と、僕は決断した。実は『レディー』の中で、僕はコッソリ、ジュンを助ける謎の人物を出していた。まだ誰だとも決めてなくて、「こういう人物を出しておけば、あとあと面白くなるだろう」と、例によってカンが働いて出していたのだ。これがいい伏線になった。しかし、『デビルマン』とは別の世界として描いていた以上、すんなり登場させることはできない。なにか、大きなアイディアが必要だった。


<第44回/おわり>

(c)永井豪/ダイナミックプロダクション2002-2003
(c)Go Nagai/Dynamic Production Co., Ltd. 2002-2003



永井豪(ながい・ごう)
1945年9月6日、石川県輪島市に生まれる。石ノ森章太郎氏のアシスタントを経て、'67年『目明しポリ吉』でデビュー。'68年『ハレンチ学園』を連載開始、たちまち大人気を博し、以後現在に至るまで、幅広いジャンルの作品を大量に執筆し続けている。代表作は『デビルマン』『マジンガーZ』 『凄ノ王』『キューティーハニー』など多数。


ネットオリジナル版・完全未公開カットからお好きなハニーを選んでご指名! キューティーハニーR.C.T. with MEGUMI

永井豪×夢枕獏 対談

永井豪×水木しげる 対談

永井豪×モンキー・パンチ 対談

豪氏力研究所  りてる


講談社は、インターネット及びイントラネット上において、閲覧者が当社の出版物及び当サイト上の画像を以下の行為に使用することを禁止しております。
  • 出版物の装丁及び見開きなどの画像の全体または一部を掲載すること。
  • 出版物の内容及び目次などの全体または一部を掲載すること。
  • 出版物の要約及び出版物を元に制作した小説などを掲載すること。
  • キャラクターの画像及び写真などの全体または一部を掲載すること。
  • キャラクターの自作画(イラスト・パロディなど)を掲載すること。
  • 出版物やキャラクター(自作画を含む)フリーソフトやアイコ ン、壁紙などに加工して掲載すること。
  • 当サイトの内容(画像・データソース)の全体または一部を掲載 すること。
以上の行為は営利非営利の目的いかんに関わらず著作権等の権利侵 害となります(著作権法23条、同条21条。公衆送信権。複製権。その他)。 守っていただけない方には法的手段を講じることも ありますので、ご注意ください。

Copyright(C) 2002-2003 KODANSHA CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED.
webgendai