永井豪天才マンガ家の作り方教えます! 永井豪、初の自伝的エッセイ 豪氏力研究所

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 「人外」の魅力 デビルマンを登場させ、同時に『ダンテ神曲』の地獄世界を取り込むことで、『デビルマンレディー』の世界は大きく広がった。そして『魔王ダンテ』の世界までも巻き込んで、単行本にして17巻という、『バイオレンスジャック』の次に長い作品になった。自分の中では、もしかしたら『デビルマン』より面白い作品かもしれない、とも思っている。


転機になった作品『シャルケン画伯』
 僕はどうして、こんなに地獄の風景にに惹かれるんだろう。おそらくその根っ子には、僕が「人外(じんがい)好き」だということがある。それを自覚したという意味で、一つの思い出深い作品がある。『シャルケン画伯』というホラー短編だ。描いたのは、1971年。『鬼−2889年の反乱−』に始まって、『吸血鬼狩り』『ススムちゃん大ショック』などと続く、一連の恐怖短編シリーズの中で発表した作品だ。

 恐怖短編シリーズは、もちろんオリジナル作品ばかりなのだけれど、この『シャルケン画伯』だけは、原作となった同名の小説がある。書いたのは、シェルダン・レ・ファニュという19世紀のホラー作家だ。ほかにも『吸血鬼カーミラ』や『白い手の怪』といった傑作ホラー短編を書いているので、「ああ、あの人か」という方も多いだろう。ちょうど、ようやくギャグマンガ専門状態から脱却できた頃だったし、ちょうどこの『シャルケン画伯』を読んで、あまりの気持ち悪さに「あー、これ描きたい!」と思って、『週刊少年マガジン』編集部に頼んで、描かせてもらったのだ。

 しかし、いざ描き始めてみたら、マンガに向いてないことがわかった。文章としては面白いけれど、絵になるシーンが少なすぎるのだ。ストーリーを勝手に変えればいいのだけれど、原作として名前を出してしまった以上、それもやりにくい。掲載直前になって、「これ、やめていいですか?」と言ってみたけれど、編集部は、もう表紙から予告から作ってしまったという。仕方なく、苦労してなんとか描き上げたけれど、あまり出来のよくない作品になってしまった。

 それでも、収穫の多い作品だった。この『シャルケン画伯』を描いたことで、自分が「人外好き」だということがハッキリわかったのだ。『シャルケン画伯』は、人間とも幽霊ともつかない、得体の知れない「人外」の存在と結婚した女性の話だ。自分の世界以外に、別の世界がある。そこから現世にやってくるヤツがいる。別の世界とは、どういう世界なんだろう。そいつはどんな存在なんだろう。そう考えるだけで、ワクワクしてどうしようもなかった。僕は、そういった「異世界」と「その住人」に興味があるんだなと、わかった。僕は、このテーマを突き詰めていこうと思ったのだ。

 よく考えてみればギャグだって、異常なシチュエーションを描くジャンルだ。昔から好きだったSFもそうだし、ホラーももちろんそう。逆に僕は、シリアスなサラリーマンマンガやスポーツマンガは、描いたことがない。僕はそういうジャンルには、魅力を感じないのだろう。異常なモノに、興味があるのだ。『シャルケン画伯』を描いて以来、そう開き直って、好きなモノだけを描き続けている。そういうマンガ家がいたって、構わないでしょ?


『デビルマン』より面白いかも
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怖い人たちの集まりではありません。漫画新人賞の表彰式で。
 さて、『デビルマンレディー』の話に戻ろう。不動明を登場させることに決めたけれど、『レディー』のコンセプトを変えるつもりはなかった。多少方向転換はしていくにしても、人類のデビルビースト化、つまり「人類の異常進化」を描くことに変わりはなかった。僕は、地獄と呼ばれる強烈なエネルギーを持つ世界が、現実の世界と接触し、影響を及ぼし始め、その結果人類が異常進化を始めたという設定にした。これまでは悪魔を描いてても、悪魔の住む世界である地獄をちゃんと出してはいなかった。「デビルマン世界」では、悪魔は地球の先住民族という設定だったからだ。ここで初めて、「悪魔が地獄にいる」という正常(?)な状態を描くことになった。

 デビルマンを登場させ、同時に『ダンテ神曲』の地獄世界を取り込むことで、『デビルマンレディー』の世界は大きく広がった。そして『魔王ダンテ』の世界までも巻き込んで、単行本にして17巻という、『バイオレンスジャック』の次に長い作品になった。自分の中では、もしかしたら『デビルマン』より面白い作品かもしれない、とも思っている。何年かたったら、通して一気に読み返してみたい。

 ただ『レディー』は、ものすごくエネルギーを消耗した作品だった。もう苦しくて苦しくて、のたうちまわりながら描いていた。ウチの奥さんにも、今も「『レディー』を描いているときは、辛そうだったよね」と言われるくらいだ。でも一方で、絵を描くこと自体は、すごく楽しかった。暴れているレディーを描いているだけで楽しかったし、地獄の風景や、登場する数々のデビルビースト、それに世界戦争まで、とにかく絵として面白いシーンにあふれている作品だったと思う。是非、一度お読みください。

 同時に、もっともっとやれる余地があったな、という心残りもある。『デビルマン』との最も大きな違いは、「人間同盟」という巨大な組織を通して世界を描いたことだ。『デビルマン』では、悪魔の侵略というマクロな現象の中での、人間単位、家庭単位のミクロな状況を描いた。一方『レディー』では、世界的な混乱を大きなスケールで描こうとした。もっと余裕を持って描くことができたら、いろんな人物を主人公にして、多角的なストーリー展開に持っていったり、今回は幸せだった美樹ちゃんを、またもやひどい目にあわせたり……。機会があったら、もう一度挑戦してみたい作品だ。

『神曲』の世界にしても、もう1回くらい描けるんじゃないかなと思っている。レディーのような超人が地獄に行くと、派手なアクションものになるけれど、普通の人が、しかもダンテのように案内人に守られることなく、地獄に堕ちてさまようことになったら、一体どんな目にあうだろう。バラバラになっても死ねないで、何度も生き返って、魔物に襲われながら地獄を進むのだ。ようやく次の階層への出口を見つけても、またその先には、恐ろしい地獄が──。ひょっとしたらマンガよりも、ダンジョンもののRPGにしたほうが面白いかもしれない。どこかのゲーム会社で、作ってくれないかな。


<第46回/おわり>

(c)永井豪/ダイナミックプロダクション2002-2003
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永井豪(ながい・ごう)
1945年9月6日、石川県輪島市に生まれる。石ノ森章太郎氏のアシスタントを経て、'67年『目明しポリ吉』でデビュー。'68年『ハレンチ学園』を連載開始、たちまち大人気を博し、以後現在に至るまで、幅広いジャンルの作品を大量に執筆し続けている。代表作は『デビルマン』『マジンガーZ』 『凄ノ王』『キューティーハニー』など多数。


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