永井豪天才マンガ家の作り方教えます! 永井豪、初の自伝的エッセイ 豪氏力研究所

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けっこう仮面がエッチなわけ まず、けっこう仮面が登場するシーン。実はこれは、中学生の頃に観た『ヨーロッパの夜』というイタリア映画がヒントになっている。この中に、ストリップ・ショーが出てくるのだ。舞台の袖にある緞帳の陰で、女の人がだんだん服を脱ぎながら、そろりそろりと体を露わにする。その様子に非常にドキドキしたので、この演出を使おうと思ったのだ。


さすがに武道家
『柔道賛歌』のパロディーをやったあと、まさか梶原一騎先生に会うことになるとは思わなかった。しかし『少年ジャンプ』の新人賞は、僕がギャグマンガ部門である赤塚賞、梶原先生がストーリーマンガ部門である手塚賞の審査員なので、授賞式で会わないはずがないのだ。会場について、梶原先生を見た瞬間に、その事実に気が付いたのだが、もう遅かった。他の審査員の方は、もう全員が着席している。空いている椅子は一つしかなく、その椅子の隣には、梶原先生が座っていた。

 ま、まずい! と思ったが、係の人にその席に案内された。どうやら、覚悟を決めるしかないようだった。──いや、待てよ。梶原先生は『おいら女蛮』を読んでいないかもしれないじゃないか。それなら、ニッコリ挨拶すればいいだけの話だ。僕は何事もなかったように、静かに椅子に腰掛けた。そして横目でチラッと梶原先生を見た。梶原先生は、ものすごく厳しい形相で、まっすぐ前を睨んでいた。僕が隣に座ったのに、こっちを見ようともしない。(あー! やっぱり読んでるよ!)。僕は心の中で、頭を抱えた。表彰式が始まった。椅子に座っている間、僕は生きた心地がしなかった。

 ようやく、地獄のようなセレモニーの時間が終わった。このまま、いつまでも黙っているわけにもいかない。僕は思い切って、梶原先生に声をかけた。「あのー、ちょっと悪ノリしちゃいまして。あの、パロディーやっちゃったんですよ。先生の作品」。すると梶原先生は、こう言った。「え? オレ、知らないよ? そんなのいいよ。あっはっはっは!」。梶原先生は、僕が自分から筋を通すのを待っていて、謝ったら許そうと思っていたようだった。さすがは、武道家だ。でも、謝る直前までは怒っていたことは間違いない。顔がピクピクしていたもの。

 パロディーは、描いているときは楽しいが、あとで結構大変だったりする。じゃあ、やらなければいいじゃないか、と言われるかもしれないけれど、僕の性分として、面白いパロディーを思いつくと、描かずにはいられない。その代わり、逆に自分の作品のパロディーをやられるのも大好きだ。噂によれば、コミケなどでは、今も僕の作品のパロディー本が出回っているらしい。でも、残念ながら1回も読んだことがない。僕の作品のパロディーを描いた人は、1冊送ってくれないかな。


けっこう仮面の登場場面は
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スタッフ、出版社の人たちと釣りでコミュニケーション。
 というわけで、『けっこう仮面』はパロディー色の強いギャグマンガになった。けれど、やはりヒットした理由は、雑誌の注文通り、とてもエッチなマンガに仕上がったからだろう。「顔を隠して、体隠さず」というコンセプトは、自分でも面白いと思ったけれど、この設定を文化人類学的に分析した本まで出版された。国際日本文化研究センター教授の井上章一氏が書いた、『けっこう仮面が顔を隠す理由(わけ)』という本だ。内容を簡単にいうと、「裸であることが恥ずかしいのではなく、顔を出しているから恥ずかしいのだ」ということらしい。言われてみると、確かにそうかもしれない。

 しかし、主人公を裸にしたからといって、それだけでウケるわけじゃない。少年マンガ誌だと、男女のカラミを描くわけにもいかず、表現になかりの制約がある。その制約の中で、読者の男の子たちを、毎回ドキドキさせなきゃいけない。そのためにいろいろと知恵を絞る必要があった。

 まず、けっこう仮面が登場するシーン。実はこれは、中学生の頃に観た『ヨーロッパの夜』というイタリア映画がヒントになっている。この中に、ストリップ・ショーが出てくるのだ。舞台の袖にある緞帳の陰で、女の人がだんだん服を脱ぎながら、そろりそろりと体を露わにする。その様子に非常にドキドキしたので、この演出を使おうと思ったのだ。もっとも、けっこう仮面は最初から裸なので、教室のカーテンから、脚からだんだんと体を現すことにした。

 念のために付け加えておくと、『ヨーロッパの夜』は、別にいかがわしい映画ではなく、マジックやコンサートなど、ヨーロッパのショー・ビジネスを紹介するドキュメンタリー映画だ。とはいっても、中学生向けの映画じゃなかったけれど。当時の日本では、ヨーロッパまで行ってそんなショーを観られる人はほとんどいなかったので、この映画は日本で大ヒットした。いくつか続編も公開されて、僕はその度に観にいった覚えがある。

 けっこう仮面登場の場面がストリップなら、必殺技も、うんとセクシーなものにした。「おっぴろげジャンプ」「すっぽんぽんアタック」など、文字通り体を張った技で、これをくらうと、敵は「こりゃまたけっこう!」と喜びながら悶絶するのだ。

 でも、それだけではすぐに飽きられてしまう。毎回違ったドキドキする場面を用意しなきゃならない。そこで、高橋真弓という美少女を、毎回いろんな方法でいたぶることにした。彼女がピンチになって、いよいよ危ないというときに、けっこう仮面が登場するのだ。縛ったり、画鋲を刺したり、逆さ吊りにしたり、いろんなことをやらせたけれど、最後のほうになるとさすがにネタに困ってきた。われながら、よく単行本5冊分も続けられたものだ。

 制約の多い少年誌で、エッチでドキドキさせる方法とは何か。僕が最終的にたどりついたのは、“SM”だった。というか、セックスを描けない少年マンガ誌で、エロティシズムを表現しようとすると、「そこ」を描くしかないのだ。これこそ、『けっこう仮面』を描いて再確認したことだった。


<第49回/おわり>

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永井豪(ながい・ごう)
1945年9月6日、石川県輪島市に生まれる。石ノ森章太郎氏のアシスタントを経て、'67年『目明しポリ吉』でデビュー。'68年『ハレンチ学園』を連載開始、たちまち大人気を博し、以後現在に至るまで、幅広いジャンルの作品を大量に執筆し続けている。代表作は『デビルマン』『マジンガーZ』 『凄ノ王』『キューティーハニー』など多数。


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