(少年アクション1975年9月8日創刊号) 藤子不二雄,ジョージ秋山,そして豪ちゃんの3人が思い思いの夏休みを描いた。豪ちゃんは もちろんSFファンタジー夢物語。 |
それは7月なかばの頃だった。久しぶりに休みのとれたぼくは,千葉の海岸まで泳ぎに出かけた。ぼくは泳ぎには自信がある。それでつい調子にのって,沖の方まで泳いでいってしまった。 と,前方に怪しい影が見えてきた。それはドクロのような形をした3つの岩影で,しかもその位置が,どうやら三角形を描いているらしいのだ。 興味を持ったぼくは,その岩の方へ泳いでいった。すると,どうだろう。ぼくがその三角形の中へ入ったとたん,突然大渦がまきおこり,ぼくの体を海底へひきずりこみ始めたのだ! (しまった!これが噂に聞く日本のバミューダー,魔の三角岩か!! ) 気がついた時には,既におそかった。海底深くまきこまれていった。同時にぼくの意識も,無限の闇の中へとおちていってしまった‥‥。 |
意識が戻った時,ぼくの体はベッドの上にあった。あわててはね起きたぼくの眼にうつったのは,絶世の美少女の顔だった!! 「気がつきましたか?地上の方」 その少女が言った。だが,ぼくはポカンとして,相手の顔を見つめているだけだった。 「私の名はエレオノーラ,この国の王女です」 「ぼ,ぼくは豪です。よろしく なにがなんだかわからずにぼくは答えた。ぼくには聞きたいことがたくさんあった。ここはどこなのか,どうしてぼくがここにいるのか‥‥。だけど,結局なにも聞けなかった。その時突然悲鳴がおこり,同時に異様な化け物たちが部屋になだれこんできたからだ。 エレオノーラと名乗った少女は,ぼくの腕にすがりついて叫んだ。 「あやつらは,私を奪いにきた悪魔です。豪さま,私をあやつらからお助け下さい!」 そう言ってからエレオノーラは一丁のヌンチャクをぼくに渡した。 |
「これはわが国に伝わる家宝です。地上の勇者だけが,この武器を使いこなせるといわれています」 ヌンチャクならぼくも自信がある。ぼくは言われるままにヌンチャクを受け取り,悪魔の群に突っ込んでいった。そいつらも確かに腕の立つ連中だったがヌンチャクをもったぼくの敵じゃない。ぼくは右に左に悪魔たちをぶちのめしていった。 しかし,調子にのりすぎたのが失敗だった。つい,エレオノーラから眼を離してしまったのだ。 「キャーっ!! 」 エレオノーラの悲鳴で,あわててふり返ると,巨大なけむくじゃらの腕が,エレオノーラの体を次元の割れ目の中にひきずりこもうとしている光景が眼に入った。 「エレオノーラ!! 」 ぼくは叫びながら,エレオノーラの体にとびついて,服をつかんだ。だが,その腕の力はすさまじく,彼女の服はベリベリと音を立てて破け,真っ白なエレオノーラの裸身が一瞬ひらめき,次には次元の断層の中へ消えてしまっていた。 |
ぼくも続いて飛び込む。しかし,そこには巨大な暗黒の渦巻だった。ぼくはたちまちきりきり舞いさせられて,意識を失っていった。 ぼくの不思議な体験はこれで終わりだ。ぼくが次に気がついた時は,漁船の上だった。沖合いでおぼれていたのを助けられたのだという。だが,あの出来事がうそでない証拠に,ぼくの手にはちぎれたブラジャーとパンティーがしっかりとにぎられていた。むろんそれはエレオノーラが身につけていたものなのだ。 いつの日か再びあの三角岩へ行き,そこから地底の世界へ行ってエレオノーラを悪魔の手から救い出すのだ。それまでエレオノーラ,無事でいてくれ,ぼくのエレオノーラ‥‥。 |