マッドマックス
MADMAX

1979
COMENTS  1979年公開された豪(オーストラリア)映画「マッドマックス」のパンフレットに豪(永井豪)イラストがあったぁぁ。主演はメル・ギブソンで,この作品出演は大抜擢で,即ブレイクした。この映画の凄いところは,目を見張るバイオレンス描写。それはまるで,ジャックの地獄の風だ(豪氏自身もそう感じた!)。後には北斗の拳へとつながるバイオレンスモノの代名詞となった。荒野を行く傷ついた皮ジャンヒーローの絵の先駆けは豪ちゃんのイマジネーションがオリジナルといっていいだろう。これはその創造主が,見事な映像化への賛辞と受け取ることができるだろう。



ザ・ネスト
THE NEST

1987
COMENTS  生物兵器として研究開発されたスーパー・ゴキブリのホラー映画です。ロジャー・コーマン率いるコンコード・ピクチャーズ制作で、監督は「ハウリング」の脚本を共同執筆したテレンス・H・ウィンクレス。「HORROR FREAKS' TALK BY GO NAGAI」と題して、豪先生による解説インタビュー1pあり。イラストなし、写真1点あり。



ヒドゥン
THE HIDDEN

1988
COMENTS  1988年の第16回アボリアッツ国際ファンタスティック映画祭に豪ちゃんは審査員としてだけでなく,受賞作品に贈られる絵画を描く画家として選ばれたのであった!そうした記念すべき映画祭でグランプリを受賞したのが『ヒドゥン』だった。そして1989年LDが発売されたのだが,豪ちゃんはその中の解説書を担当していた。監督・ジャック・ショルダーとの2ショット写真だけでなく,豪ちゃんのイラストも1つあり。


(LD内解説書なので正方形なんだけど,スキャンできないので一部だけ。)
 スティーブン・スピルバーグ、デビッド・リンチ、ジョージ・ミラー。次々とヒット作を生み出し、現在では“巨匠”ともてはやされているこれらの映画監督たち。彼らがまだ無名だった頃、いち早くその才能に注目し、賞を与え、世に送り出したのが、“アボリアッツ国際ファンタスティック映画祭”だ。
「ヒドゥン」は、そのアボリアッツ映画祭で、1988年度のグランプリに輝いた作品であり、このホラー・ファンタジーの傑作を監督したジャック・ショルダーは、その授賞式の夜を境に、世界中から熱いまなざしを送られる、注目の人となった。
 その年の審査員の1人として参加していた僕は「ヒドゥン」が受賞にいたるまでの感動的な一部始終を、世界中から駆け付けた12人の審査員(映画監督のシドニー・ルメット、俳優のマイケル・ヨーク、美人女優のバレリー・カプリスキー、他)や映画ファンたちと共に、目撃したのだった。
 アボリアッツ映画祭は毎年、フランス東南部のアルプス山中のスキー場で開かれる。銀世界を背景に、未来的デザインの建物が並ぶ様は、まるでSF世界のようだ。
 この映画祭は、僕が好きな“SF”“ファンタジー”“オカルト”“ホラー”など、メジャーな映画祭からは敬遠されがちなジャンルの作品、低予算ながら未来を予見させるような作品を、世界中から集めて上映することで有名だ。だから審査員としての招待と、受賞者への賞品となるイラスト数点の寄付の依頼がきた時、大喜びで引き受けた。
 実は「ヒドゥン」は、上映前全く問題にもされない、ノーマークのエントリーだった。グランプリに本命視されていた「ロボコップ」の主演俳優、監督、プロデューサーが鳴物入りで乗り込んできたのと対照的に「ヒドゥン」の配給会社が送り込んだのは、監督のジャック・ショルダーただ1人だった。
 年齢は30代のなかばぐらいだろうか。見上げるほどの長身のアメリカ人ジャックは、薄くなった髪がかもしだすユーモラスな風貌と異なり、感受性の強そうな、とても真面目で率直な、頭のイイ好青年だった。
 フィラデルフィア生まれ。トランペッターとして10代を過ごし、技術専門学校にはいるが、映画に魅かれ、アンティオキ・カレッジに入り直して映画製作の勉強を始め、「ダイアリー」「キャッツ&ドッグ」など何本か製作した短編は、そこそこの評価を受けたものの、チャンスに恵まれぬまま10年間をTV界で過ごし、念願の長編作を初めて撮ったのが82年の「ジャンク・イン・ザ・ダーク」、その4年後に「エルム街の悪夢2」というのだから、遅咲きと言えるだろう。
 正直言って僕は、ジャックの撮った「エルム‥‥2」には感心しなかった。だから「ヒドゥン」がジャックの監督と知った時、ま〜ったく期待はしていなかった。
   ところが、どうだッ!銀行の防犯モニターに、“THE HIDDEN”とタイトル・ロゴがかぶさり、その中にカイル・マクラクランの目が映し出されるや、第1の強盗殺人事件が発生し、カメラが銀行の表に出るやいなや、すさまじい勢いでカー・チェイスが始まり(このスタントは、本当にすごい!ケガ人が出なかったのか心配ダ)、怪物は出るワ(特殊メークはケビン・イエガー、「エルム街の悪夢2」「同3」)、LA市警察官たち(マイケル・ヌーリー「フラッシュダンス」他)の職場ドラマはあるワ、残忍な殺しが次々出るワ、家族愛はあるワ、友情はあるワ、善良なエイリアン(カイル・マクラクラン「砂の惑星」)が、ユーモラスな雰囲気で笑わせてくれるワ(アルカセルツァーと鎮痛剤のエピソードや、食事のシーンはオカシイ)、弾はバンバン乱れ飛ぶワ、血しぶきが上がるワ、火炎放射器が炎を撒き散らすワ、バックにヘビメタ(METALLICA他)がガンガン流されるワ(悪いエイリアンはヘビメタ狂いなんだよね。C&Wの曲を放送するオーディオを、怒ってぶん投げて壊してしまう)、美人のカワイイお尻は見られるワ、結末はヒューマニズム(このクライマックスは、アボリアッツで大受け大笑いだった)にあふれているワ‥‥で、2時間弱が「あっ」という間に経ってしまったのだ。
 ボブ・ハント(またの名をジム・カウフ、「張り込み」)の良質な脚本に支えられたこともあるだろうが、普通これだけの要素を1本の映画に盛り込むと、中途半端のドツボに落ちるのがオチなのだが、さすが下積みの長いジャックは、場面場面を丁寧に描き、観客に状況を一つ一つ納得させていくことが、1番大切なことをよく心得ている。
 縦横無尽に動くカメラがスピード感を盛り上げ、善良な市民たち(と、1匹の犬)が、悪いエイリアンに体を乗っ取られた途端、(犬までもが)残虐非道な風貌に変化するという、役者たちの演技も素晴らしい。
 観客をハラハラ、ドキドキさせ続け、まるで「映画は娯楽だ!」のお手本のようなこの「ヒドゥン」が、「かつて映画は娯楽だったはずなんだけど、文芸作品偏重のカンヌや、超大作主義に陥ったアカデミーは、最近ちょっとオカシイから、ここらで一つ原点に返ってやってみようかな」と始められたアボリアッツ映画祭で、自己主張の固まりのようなウルサ型の(僕たち)審査員と、映画がつまらないと途中でさっさと帰ってしまう、シビアな欧米の映画ファンたちの圧倒的な支持を得て、グランプリを獲得したのは、当然の成り行きかもしれない。
 アボリアッツから帰国後、ジャックから手紙がきた。「君の絵を、いつも目に付く所に飾ったよ。有難う!」
「ヒドゥン」は、間違いなくジャック・ショルダーの出世作だ。僕は、ジャックがこれからも、観客をワクワクさせる映画を、作り続けてほしいと願っている。

             永井豪

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