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高校卒業の日、教室でクラスメイトと。手前中央が永井豪氏。
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僕は小学生のときにはもう、漠然とではあっても、マンガ家になるんだと決めていた。でも、実際に描き始めたのは高校生になってからだ。なぜそれまで描かなくて、なぜ高校生になってから描き始めたのだろうか。考えてみたのだが、たぶん画力の問題ではなくて、この頃になってようやく、ストーリーを作る力がついたからではないだろうか。絵だけではマンガとは呼べない。ストーリーがあって、初めてマンガなのだ。
やがて僕は高校卒業の時期を迎えたが、何しろ勉強はしないでマンガばっかり描いていたものだから、当然のように大学受験に失敗した。というか、いずれマンガ家になるつもりだったので、もともと大学に行く気がなく、勉強に身が入らなかったのだろう。でも、どうすればマンガ家になれるだろうとかを、真剣に考えていたわけではなかったし、先の人生についても深く考えていなかった。それで、大学に落ちると、周囲に流されるまま、とりあえず友達と一緒に予備校に行くことにした。
予備校の授業はは高校とは違うし、最初のうちは新鮮で面白かった。でも、すぐに飽きてノートにマンガを描くようになったので、自分でも「こりゃダメだな」と思っていた。予備校の友達も、一学期までは一緒に遊んでくれたが、だんだんみんな受験に対し真剣になってきてきた。そうなると僕はつまんないし、だからといって真面目に受験勉強する気もなかったから、こりゃあいよいよ本腰を入れて“マンガ家する”しかないなと思い始めた。
この頃、つまり高校から予備校時代には、ほかにも何作かの習作みたいなものを描いている。でも、どれも最後まで描き終えていない。どうしてなのだろう。後でわかったのだが、複雑なストーリーを考えられるようになると、今度は画力と演出力が足りなくなってしまった、というのがどうやら真相のようだ。頭の中には、ものすごいイメージが広がっているのに、それを絵で表現しようとすると、手が追いつかない。どう描いても「違うなあ……」。結局、自分の思い通りに描けないため、嫌になってやめてしまう。この頃の作品が全部未完なのは、これが理由だったのだと思う。
そんなある日、僕の人生を大きく動かす事件が起きた。結果的にはその一件があったおかげで、僕はマンガ家になった。その事件については、次回書くことにする。
<第7回/おわり>
(c)永井豪/ダイナミックプロダクション2002
(c)Go Nagai/Dynamic Production Co., Ltd. 2002
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